対応コストから「無形資産」への転換、CS3Dへの備え

国連の「世界人権宣言」が12月10日で採択75周年を迎えました。この宣言は、世界を巻き込む二度の大戦が人権の迫害・侵害・抑圧、大量虐殺などを引き起こした反省から「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」として1948年の第三回国際連合総会で採択されたものですが、この機会にあらためて読み返しますと、すべての人間は生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である(第一条)、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する(第三条)、奴隷制度および奴隷売買を禁止する(第四条)、労働時間の合理的な制限および定期的な有給休暇を含む休息及び余暇をもつ権利を有する(第二十四条)等々、30カ条に亘り、今日の人権関連法制の基礎となる宣言が謳われていることを再認識します。

この75周年の人権デーに国連のアントニオ・グテーレス事務総長がメッセージを寄せていますが、「世界は、道に迷いつつある」「権威主義が台頭している」「世界中の人々に(中略)人権を推進し、尊重するよう要請(urge)する」など、危機感の伝わるメッセージだったことが印象的です。残念ながら現在の国際社会が、この宣言で謳われている理想からかけ離れてしまっていることを明確に示唆する内容でした。

積極対応により、対応コストを上回る効果も

2011年6月に承認された国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」は、人権尊重を国家の義務だけでなく、企業の責任と位置付け、国家と企業の双方に人権尊重の取り組みを促すとともに、企業には具体的な取り組みとして、①人権方針によるコミットメント、②人権デューデリジェンス(DD)の実施、③救済措置を求めています。日本を含めて、主要各国で指導原則の普及・実施に関する行動計画が策定されるとともに、欧米では人権DDの義務化法案が制定・施行され、EUでは「企業サステナビリティDD指令(CS3D)」が発表されるなど、日本企業も対象になり得る人権関連の法規制が次々と制定されており、企業による「ビジネスと人権」の取り組みは待ったなしの状況にあります。 12月8日の日本経済新聞朝刊に海外サプライチェーンの比重が高い国内のアパレル各社が人権DDの対応を急いでいるとの記事が出ていましたが、上述の欧米の関連法規制強化の動きに加え、政府による人権DD手引書など方針策定の流れや、投資家目線の高まりなどを背景に、企業に人権DDの実行を求める圧力は今後一段と増していくものと思われます。

一方で、日本貿易振興機構(ジェトロ)による海外進出企業約3千社への調査(2022年)では、人権DDを実施する企業は全体の11%にとどまるなど、まだコストをかけてまで調査を行うことにハードルがあるようです。 ただ、少し冷静に考えますと、今後、企業価値向上に向けた「人的資本経営」の導入が本格化し、投資家による企業評価の主な判断材料となっていく中で、人的資本経営(機会)の裏側である人権侵害(リスク)の予防や軽減とその情報(非財務情報)開示の充実は、まさに優秀な人材の確保や投資家の評価向上による無形資産の拡大に直結する有効な取り組みでもあります。むしろ、競合他社に先駆けて積極的に取り組んでいくことで「目先の対応コストを大きく上回るサステナブルな企業価値向上につながるのでは」ということに気づく企業経営者が今後は増えていくのではないでしょうか。

  • 国連「世界人権宣言」採択75周年
  • 一層求められる企業の「人権尊重」の取り組み
  • 積極対応により、対応コストを上回る効果も

当社がお役に立てること

JPR&Cでは、お客様の人権DDをご支援するため、世界各国・各業種における人権課題の把握や海外サプライヤー等の人権リスク情報の抽出を行うAIモデルのご提供、また、国内外の人的ネットワークを活用した詳細な人権リスク調査等のサービスをご提供します。

  • 【事前調査】 公的機関や世界15,000超のNGO団体が日々更新する人権リスク情報などを網羅した独自のデータベースに基づく国・業種別の人権課題マッピング。
  • 【本調査】 世界のNGOやニュース情報などへのアクセスを通じた調査対象サプライヤーの人権リスク情報の抽出。また、リスクが顕在化・潜在化するサプライヤーに対する詳細調査。

人権デューデリジェンスへのご相談