サプライチェーンの「デリスキング」と経営課題としての経済安全保障
地政学リスクへの警戒が高まっています。中国の7~9月における外資の直接投資が初のマイナスに転じたとのニュースが先週末の日経新聞などに出ています。中国国家外貨管理局が3日に公表した7~9月の国際収支によりますと、中国への直接投資は118億ドル(約1兆7千億円)のマイナスと、統計を遡れる1998年以降で初めてマイナスになった模様です。米中摩擦の激化やゼロコロナ政策によるサプライチェーンの混乱、ウクライナ情勢などを背景に、地政学リスクや経済安全保障を主要な事業リスクとして捉え、開示する企業が増えていますが、中国への新規投資を控える動きは実際の統計数値にも顕著に表れ始めたと言えるでしょう。
中国は、米国による先端半導体や製造装置の輸出規制に対抗して、今年8月からガリウムやゲルマニウムなどの希少金属の輸出規制を実施していますが、先月10月には米国バイデン大統領が半導体規制の対象範囲の拡大を発表、中国もEV(電気自動車)向けのリチウムイオン電池の材料である黒鉛の輸出規制を発表するなど、経済安全保障を巡る米中対立は激しくなる一方で、日本企業も巻き込まれる構図にあります。
強固なリスク管理態勢と不断の情報収集・分析が重要
黒鉛の関連品目の輸出規制は12月から実施される予定で、西村経済産業大臣(当時)は会見で、日本企業への影響は精査中としたうえで、「黒鉛は重要物資であり、特定国に依存しない形で、サプライチェーンを構築していく」との考えを強調しています。 西村大臣は以前より「レベル・プレイング・フィールド(公平な競争環境)の確保」という表現で特定国に依存しないサプライチェーンの構築の必要性を強調していますが、これは中国に限らず、ある特定国において、その国の製品が安価であったとしても、それが補助金や強制労働などに頼っていれば公平な競争環境が確保できない、さらには特定国への依存は経済的威圧の脅威にさらされかねないなどから、企業は経済安全保障の観点で「デリスキング」を進めていくべきということです。
今年3月の国内大手製薬メーカー社員の中国当局による突然の拘束は、同国に進出する多くの日本企業の警戒心を一気に高めることとなりましたが、国内非鉄専門商社の中国人社員も同じ3月に拘束されていたことが先月判明しており、この不透明な状況が続けば、今後、現地社員の安全を重視する企業による中国への投資はますます細る可能性も否定できません。
米中摩擦だけでなく、ウクライナ情勢、中東の緊張など、世界は冷戦後の「米国1強」時代から、多極化・新冷戦時代に突入しつつあります。この混迷の時代に企業がサステナブルな価値向上を目指すには、もはや地政学リスク・経済安全保障を経営の中心課題に据えて「リスクと機会」の観点から対応せざるを得ない状況にあります。当該リスクの特性は、突然発生する有事等への対応が求められる「緊急性」と、状況が流動的で不確定要素が多い「不透明性」にあります。 この緊急性と不透明性の中で、企業が迅速かつ的確な判断や対応を行っていくためにも、まずは経営者を司令塔とする強固なリスク管理態勢と、不断の情報収集・分析対応が欠かせません。
- 7~9月の外資による中国への直接投資は初のマイナスへ。地政学リスクへの警戒などから投資細る
- 世界は「米国1強」時代から多極化・新冷戦の時代へ。地政学リスク・経済安全保障は経営の中心課題に
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