イランによる初のイスラエル直接攻撃
4月13日夜から14日朝にかけて、イランおよびその代理勢力は、イスラエルに向けてドローンとミサイルによる直接攻撃を行いました。1979年のイラン革命以降、イスラエルとイランは、構造的な対立関係にあるものの、要人暗殺、サイバー攻撃、代理勢力による攻撃などを通じた「影の戦争(shadow war)」を展開することで、互いに直接的な武力衝突は避けてきましたが、ここにきてイランは初めてイスラエル領内への直接攻撃に踏み切った形となります。14日夜、日本を含むG7諸国は、このイランの攻撃に対して「最も強い言葉で非難する」との共同声明を発表し、イスラエルへの連帯と支持および同国安全保障への関与を再確認しました。
他方、イランは、今回のイスラエル攻撃について、4月1日のイスラエル軍によるとされるシリア・ダマスカスのイラン大使館への空爆を受けての「自衛権の行使」と主張しており、イスラエルが、安保理決議や国際法に反する「犯罪的行動」に出た非を指摘しています。結果的に、イラン等が発射した合計300以上のドローン、巡航ミサイル、弾道ミサイルは、その「99%」が、イスラエルの空軍や防空システムや近隣海域に展開する米英の両海軍によって迎撃され、イスラエルが受けた物理的被害は限定的だったとされます。
マクロ・ミクロ両面からの地政学リスク把握が不可欠に
イスラエルは、今回のイランの攻撃に対して「代償を払わせる(exact a price)」旨を明言していますが、米国等のパートナー国は、事態のエスカレーションを危惧する立場から、イスラエルのイランへの「反撃」を支持しない(ただしイスラエル防衛には協力する)方針であり、当のイスラエルもガザ地区でのハマス掃討作戦に加えてイランとの戦端を本格的に開くことの戦略的妥当性については慎重に検討しているふしがあります。またイランとしても今回の攻撃を抑制的かつ限定的に展開した形跡が窺えます。
その限りで、今回の攻撃が、中東全体を巻き込む両国の全面戦争へと発展する可能性は現時点では必ずしも高いとはいえませんが、ダマスカスのイラン大使館への空爆に対するイランの報復措置が、「大方の予想」を超えてイスラエル本土への直接攻撃に至ったように、事態の「想定外の展開」に対する備えはつねに怠るべきではないでしょう。とりわけ、イスラエル・イラン関係のいっそうの緊迫化により、米国の戦略的アセットが一定以上、中東地域に固定される状況を歓迎する中露等の存在は、両国関係をめぐる大国間パワーゲームの方程式をいっそう複雑にしてることは間違いありません。
こうした状況にあって、我が国企業としては、その業種、業界に即した解像度の高い情報収集を通じて、二次的、三次的な連鎖も視野に入れた緻密な因果関係を踏まえたシナリオ分析を行い、「リスクと機会」を高い精度で見極めることが肝要です。中東、ウクライナ、台湾など、地理的に離れた地域の相互の地政学的連関に目配りしたマクロのリスク把握と、特定地域における自社の事業拠点・サプライチェーンの脆弱性に着目したミクロのリスク把握を表裏一体に捉えた「地政学デューデリジェンス」が今ほど必要とされる時はないと言えましょう。
- イランによる初のイスラエル直接攻撃で危惧される事態の偶発的エスカレーション
- G7と歩調をそろえた日本。中東外交の転換点か
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