イスラエルの有望なハイテク産業も苦境に
先月に突然勃発したイスラエル・ハマス戦争は、イスラエル経済のけん引役となっているハイテク企業に大きな影を落としています。イスラエルは「中東のシリコンバレー」と呼ばれるほど、世界でも有数の革新的なハイテク企業、中でもスタートアップ/ベンチャー企業が多く、国内外から多額の資金を集めてきましたが、今回の戦闘により、資金調達が難しくなるとともに、軍が36万人もの予備役を動員したことで、ハイテク産業からも従業員の15%が動員された模様で(NPOのスタートアップ・ネーション・セントラルの推計。11/21日本経済新聞電子版記事より)、資金調達と労働力確保の両面から逆風を受けています。
日本とイスラエルの経済関係は良好で、今年5月末にもイスラエルの大手経済紙や銀行が主催するビジネスカンファレンスが東京都内で開催され、弊社も参加していますが、国内外から4~5百人の企業関係者が集まり、岸田首相も祝辞を寄せ、両国の著名経済人やベンチャー企業経営者などがプレゼンやディスカッションを行う盛大なイベントでした。このイベントでイスラエル企業への出資を決めた関係者もいたのではないかと思われますが、そのたった4か月後に今回のような事態が起こるとは、当時のカンファレンス参加者は誰も想像しなかったでしょう。
日頃の関連情報の収集と分析が欠かせない作業に
近年の不安定な国際情勢を背景に、地政学リスクが経済や企業価値、また企業の行動様式に影響を及ぼす事例がよく見られるようになりました。イスラエル・ハマス戦争によるイスラエル企業や海外の出資企業への影響の発生は先述の通りですが、2018年からエスカレートした米中摩擦、2020年の新型コロナ感染拡大、昨年以降のウクライナ情勢は、関税の引上げや輸出入規制、サプライチェーンの混乱、エネルギーや食料価格の高騰などを通じて、1970年代のオイルショック以来の世界的な高インフレを引き起こし、インフレ抑制に向けた主要国の急速な金融引締めにより、米国銀行の破綻やクレディスイスの破綻、世界経済の減速などに繋がっています。
また、近年は「エコノミック・ステイトクラフト(政治的目的達成のために経済的手段によって他国に影響力を行使する)」や「ハイブリッド戦争(同様に政治的目的達成のため、軍事的脅迫とそれ以外の様々な手段が組み合わされた戦争手法)」といった言葉をよく見聞きするようになりましたが、経済的威圧や輸出入規制、サイバー攻撃、企業情報等の流出、偽情報等の情報戦、テロなど、企業の経済活動自体が様々なリスクに晒される機会が増えつつあります。 先日も日本の工作機械が海外の取引先を通じて懸念国の研究機関に不法に流れていたとの旨、日本経済新聞に出ていましたが、今やM&Aや新規取引などにおいては、対象先企業だけでなく、その先の取引先や主要株主等まで含めたリスク・デューデリジェンス(DD)を行い、事前に相手先を良く知る(Know Your Counterparty (KYC))、また定期的なモニタリング調査を行うなどが欠かせなくなりつつあります。
さらに、海外サプライチェーンの管理においては、人権リスクへの目配り、「人権DD」の実行がMUSTの取組みとなります。地政学リスクへの対応が経営の中心的課題となりつつある中、まずは日頃からの関連情報の収集と分析が最低限欠かせない作業となるでしょう。
- イスラエル・ハマス戦争により、イスラエルの有望なハイテク産業も苦境に
- 「エコノミック・ステイトクラフト」「ハイブリッド戦争」で企業のリスク環境は一層悪化へ
当社がお役に立てること
弊社は世界に広がる情報ネットワークを駆使した「地政学デューデリジェンス」サービスにより、お客様の経営判断に資するインテリジェンスをご提供します。
【地政学デューデリジェンス】 (情報提供、分析、対応策提示までご支援いたします)
- フェーズ1:お客さまの経営状況から対応すべきリスク項目を整理し、関連情報を提供
- フェーズ2:各リスク項目に関するリスク・シナリオ分析を行い、分析情報を提供
- フェーズ3:各リスク・シナリオにおけるお客さまへの影響分析、脆弱性分析を実施
- フェーズ4:影響分析や脆弱性分析に基づく対応事項や方向性を提示