成功への鍵は、事前の「戦略的情報収集」

日本企業が買い手となる国内外M&Aは今年(2025年)1月~6月で前年同期比3.6倍の2,148億ドル(約31兆円)と、1980年の統計開始来で半期として過去最大になった模様です(7/10日経新聞)。英LSEGによると、同時期における世界のM&Aは1兆9,792億ドルと3割増加し、日本を除くアジア太平洋地域の企業によるM&Aも9割増えるなど、世界レベルで企業再編が進んでいるようですが、その中でも日本勢によるM&A金額の世界シェアが約35年ぶりに1割を超えるなど、日本企業発のM&Aは加速している状況です。

また、近年は国内企業同士や海外企業との事前同意なきTOBも散見されるようになりました。2023年8月に策定された経済産業省の「企業買収における行動指針」で、真摯な買収提案に対しては真摯な検討が取締役会に求められるようになったことも背景にありますが、コーポレートガバナンス改革や東証市場改革を含め、企業に資本効率を高める経営や企業価値向上を求める動きは、今後ますます強まっていくものと思われます。

M&Aを成功に導く事前の戦略的情報収集と分析

将来への成長投資としてM&Aは不可欠だが、失敗例も少なくない

財務省の「法人企業統計調査(令和5年度年次別調査)」によると、日本企業の内部留保と現預金は過去10年で2倍近くまで拡大しており、2023年には内部留保が600兆円、現預金も300兆円を超えました。この潤沢な資本やキャッシュを今こそデフレ脱却に向けて、将来の成長投資であるM&Aなどに活用することが求められていると言えるでしょう。

一方で、その重要なM&Aも、特に海外案件において当初の思惑通りに進まず、失敗に終わるケースが少なくありません。その多くの失敗例に共通する主な原因は、①「現地経済や法規制、業界アセスメント」の不足と、②「買収先の『人』に絡む情報収集と分析」の不足にあると、弊社ではこれまでの調査経験などから捉えています。

買収先の「人」に絡む「事前の戦略的情報収集」が重要

M&Aでは、買収先への財務・ビジネス・法務DDなどを通じた事業価値の算定や買収条件の決定等が必要ですが、より重要なのは買収後の統合作業(PMI)を通じたシナジーの創出です。特に地政学リスクなど不確実性が高まる時代において、算定通りのシナジーを生み出せるかは、現地経済や法規制、業界の状況に加え、買収先の「人」の能力や協力関係に大いに依存します。

そのため、現地のマクロ情報や業界情報等と共に、特に買収先の「人」に絡む情報(経営陣やガバナンスの状況、社内風土、主要株主、また、ロビーイングも想定した現地有力政治家や当局キーマンの情報等々)を事前に収集・分析する「戦略的情報収集と分析」=「Deal Intelligence」を実施し、戦略的にM&Aを進めることが、M&Aの成功に向けて非常に重要であると弊社は考えます。

  • 急増する日本企業によるM&A。今後も更なる増加へ
  • 一方、特に海外のM&A案件では失敗例も少なくない
  • M&Aを成功に導く「事前の戦略的情報収集と分析」