企業に求められる人権DDの実行と、スポンサーとしての責任
大手芸能事務所の元代表による未成年者に対する性加害問題が日夜報道されています。同所が先月初めに性加害の事実を認め、社長交代を発表してから約1か月が経ちますが、騒動は収束に向かうどころか、大きくなる一方であり、この問題の深刻さを伺わせます。日本の芸能界を長年牽引し、多くの業界や企業と密接に絡んできた同所で、このような大規模な人権侵害が起こったこと自体が前代未聞のことですが、この問題がかなり前から告発本の出版や週刊誌による報道、法廷闘争などを通じて明るみに出てきたにも関わらず、長年大きな問題になってこなかったことも驚くべきことで、これは日本人の人権意識の低さも背景にあるものと思われます。
今回の騒動を受けて、同所タレントの起用を中止するスポンサー企業が増えていますが、こういった各社の対応や一般の受け止め方を含めて、この問題は間違いなく日本企業にとって「ビジネスと人権」への意識をこれまでになく高めるとともに、あらためてビジネスにおける人権尊重のあり方を問う大きなきっかけとなる事象と言えるでしょう。
ビジネスと人権の理解度向上と人権DDの実行が重要
同所の性加害問題は今年3月の英BBCの報道や4月の元所属タレントによる日本外国特派員協会での被害告白会見などで再度注目されましたが、事態が大きく動いたのは、国連の「ビジネスと人権」に関する作業部会が直接調査に乗り出し、同所タレント数百人の性的搾取と虐待が明らかになったと発表したことにあります。同作業部会は、政府や被害者と関係した企業が対策を講じる気配がなかったことから、日本政府が主体となって透明な捜査や被害者の実行的救済を確保する必要がある旨も指摘しています。「国連ビジネスと人権に関する指導原則」では「人権を保護する国家の義務」「人権を尊重する企業の責任」「救済へのアクセス」を3つの柱とし、企業には「方針によるコミットメント」「人権デューデリジェンス」「救済措置」を求めていますが、今回の国連作業部会による指摘はこの指導原則に沿ったもので、国連自らが日本政府に透明な捜査と被害者救済の主体となるよう要請した形です。
当該指導原則や日本政府の「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」では、企業の取引先などで「人権への負の影響」が顕在化・潜在化している場合は、その取引関係を維持して、負の影響の防止・軽減に向けて影響力を行使すべきとしており、取引解消は最終手段の位置づけにあります。今回の件でスポンサー契約を解消する企業も多いですが、ビジネスと人権は人権への負の影響の防止と軽減の話であり、企業のリスクマネジメントとはやや視点が異なることも企業はあらためて留意する必要があるでしょう。 いずれにしろ、今回の問題をきっかけとして「ビジネスと人権」に対する一層の理解度向上と、人権デューデリジェンスの着実な実行が求められることは間違いなさそうです。
- 前代未聞の未成年性加害問題がビジネスと人権への意識をさらに高めるきっかけに
- ビジネスと人権の理解度向上と人権デューデリジェンスの実行がますます重要に
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