第三者割当増資とはなにか

第三者割当増資は、会社の資金調達手段のひとつであり、特定の第三者に対して、新株(あるいは会社が処分する自己株式)を引き受ける権利を与えて行う増資を意味します。株式発行体に対して資金が直接払い込まれるという機動性が特徴であり、非上場会社のみならず多くの上場会社が活用しています。

この手段は従来、業務提携先や取引先、取引金融機関、あるいは自社の役職員など発行会社の縁故者に割り当てるケースが多いことから、「縁故募集」や「縁故者割当増資」などと呼ばれることがあります。ただ、実際には“縁故”で資金調達を得られる会社ばかりではなく、アレンジャー(金融仲介者)を介して割当予定先を決定する会社も少なくありません。

第三者割当増資に関する問題意識には、既存株主の議決権の希薄化や上場会社の経営者による大株主の選択といったコーポレート・ガバナンスにかかわる視点に加えて、市場の信頼性・公正性の確保という視点からの周到な配慮が必要です。

第三者割当増資に不可欠な割当先等の健全性調査

しかしながら、第三者割当増資は、公募増資に比べて第三者のチェックが入りにくく、不適切な行為や、その隠蔽が発生する恐れがある点に注意が必要です。第三者割当増資を検討する会社の中には、「資金繰りが逼迫した状況に陥った会社」や「時価総額基準や債務超過などの上場廃止基準に抵触するおそれのある会社」も多く、一刻も早く資金調達を実現する必要に迫られるケースも少なくありません。とくに財務面で危機的な状況にある上場企業は、社外のアレンジャーによる「紹介話」などに食指が動く傾向が強くなります。

こうした場合、発行体としては、「守り」(リスクマネジメント)への意識が後回しになり、近視眼的に「第三者割当増資が実行できれば良い」という考えに陥ってしまうこともあります。しかし、企業の永続性・健全経営あるいは、証券市場の信頼性・公正性の確保という視点に立てば、上記の近視眼的な考えがいかに危険であるかがわかります。したがって、第三者割当増資を検討する場合でも、割当予定先に関して気にかかる内容や確認が必要な点などを網羅的に精査する「健全性調査」が必要となります。

視点①: 巧妙化する「反社会的勢力」の潜伏手口

第三者割当増資を企図するにあたり、第一に注意すべきは、割当予定先について「反社会的勢力との関係」がないかどうかを確認することです。「反社会的勢力」とは、たとえば2007年6月19日付で発表された政府指針『企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針』[1]において、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」と定義されていますが、より具体的には「暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等」などの属性要件、そして「暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求」といった行為要件に即して判断することが有効とされています。

  • 政府および証券市場による「反社チェック」規定

2009年12月に施行された内閣府令により、上場企業が行う第三者割当増資に対する規制の厳格化と開示規制の強化が定められました。“市場の信頼性・公正性の確保”という視点で見た場合、『割当先の恣意性にかかわる問題』[2]への対応として、有価証券届出書に「割当予定先が反社会的勢力であるか否かについて確認した結果及びその確認方法(企業内容等の開示に関する内閣府令第2号様式【23-3】)」の具体的な記載が求められました。また、証券市場(東京証券取引所)による規制としても、2009年8月に施行された有価証券上場規程施行規則から、「割当を受ける者と反社会的勢力との関係がないことを示す確認書」の作成・提出が義務付け[3]られています(第417条第1号e)。

こうした内閣府令や有価証券上場規程施行規則の定めに基づき、第三者割当増資を検討する上場企業は、割当予定先が反社会的勢力と関係していないことを事前に確認することが必要となり、その具体的かつ実効的な手法の一つとして、第三者の専門調査会社を活用した健全性調査(一般的には、「反社会的勢力調査」ともいう)を実施することが一般的なアプローチとなっています。

  • ますます不透明化し、巧妙化する「反社勢力」

こうした第三者割当増資に際しての「反社会的勢力調査」については、過去十数年のあいだで、民間企業のあいだでも、その重要性や必要性に対する意識や理解は飛躍的に高まってきた印象がありますが、その反面、「いまさら反社?」「もう反社の話はいいのでは?」といった意見も一部で耳にします。たしかに、毎年、警視庁が発表する『組織犯罪の情勢』[4]をみると、全国で暴力団排除条例が施行された2011年以降、暴力団構成員のみならず、総会屋・会社ゴロおよび社会運動等標榜ゴロの数も年々減少している傾向が示されています。しかしながら、こうした傾向について「反社勢力が世の中から消えた」と額面通りに捉えるのではなく、そうした「反社勢力」の存在が不透明化したのみならず、その活動がいっそう巧妙化したことで、その実態がこれまで以上にわかりにくくなったと理解すべきでしょう。


[1] https://www.moj.go.jp/content/000061957.pdf

[2] 平成22年2月10日付、『第三者割当増資のあり方等について-「第三者割当の取り扱いに関するワーキング・グループ」報告書-』(https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/houkokusyo/h22/files/wariate_wg.pdf)

[3] 東京証券市場では、割当先のすべてが東証の上場会社、取引参加者又はその他東証が認める者である場合は、確認書の提出は不要となる。ここでいう東証が認める者とは、国、地方公共団体又はこれに準ずる者を想定する。上場企業を割当予定先とする場合、健全性調査を行わないケースがあるのはこのため。(https://faq.jpx.co.jp/disclo/tse/web/knowledge7762.html)

[4] 『令和4年における組織犯罪の情勢【確定値版】』令和5年3月、警察庁組織犯罪対策部(https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/R04sotaijousei/R4jousei.pdf)

視点②: 「不公正ファイナンス」を未然に防ぐ

割当予定先の健全性調査の第一義的な目的は、上で述べた内閣府令および有価証券上場規程施行規則に則った「反社会的勢力との関係がないことの確認」です。ただし、『市場の番人』といわれる証券取引等監視委員会(金融庁)や、有価証券届出書・有価証券通知書の提出先となる財務省、証券市場の信頼性確保に向け上場企業に各種の規制を設ける証券取引所などでは、「不公正ファイナンス」の防止と監視の強化を念頭に、割当予定先の健全性調査を重視する傾向が強まっています。

「不公正ファイナンス」とは、増資など有価証券の発行プロセスと流通市場に跨った不適切行為が複雑に絡んだ不公正な取引[1]を指します。従来型の金融商品取引法では、インサイダー、株価操縦、風説の流布など、上場株式の“流通市場”における不適切行為を「不公正取引」としてきました。しかし、近年では架空増資、不動産を過大評価した現物出資、資金流出(開示目的外の使用)、既存株主の権利侵害(株式価値の希薄化)、特定者の利益確保(特定者への利益供与)など、“流通市場”での問題に留まらない複雑かつ一連の「不公正ファイナンス」の事例が増大しています。

いうまでもなく、第三者割当増資そのものは企業の資金調達の手法として不公正なものではありません。ただし、この手法を舞台装置の一つとして証券市場の内側と外側に跨った一連の「不公正ファイナンス」を計画し、そのシナリオ通りに事を運ぼうとするアレンジャー(あるいは、「コンサルタント」、「指南役」、「金主」)が存在するならば、それは、上述した第三者割当増資の注意点を逆手にとって、不正に利益を得ようと考えている可能性が高いといえます。したがって、第三者割当増資に際する健全性調査は、割当予定先が“反社会的勢力か否か”のみを確認する、いわゆる「反社チェック」ではなく、不公正ファイナンスの可能性を念頭に置いた割当予定先の詳細なバックグラウンド・チェックまでカバーする必要があります。

ご参考まで、「不公正ファイナンス」と第三者割当増資との関係について、当局による規制の厳格化と開示規制の強化への取り組みが本格的に動き始めた2010年当時の印象深いエピソードがあります。弊社のあるクライアント企業が第三者割当増資を実施するため関東財務局に事前相談を行った際、財務局の担当者から、割当予定先について「WEB上の匿名掲示板(=当時の2ちゃんねる)に書き込まれている問題について、確認は行っているか」との指摘を受けたというのです。この匿名掲示板に記載された内容は、直接、割当予定先と反社会的勢力との関係性を示唆するものではなく、割当予定先の関係者に、かつて不適切な行いがあったことを仄めかす程度の風評レベルに過ぎないものでした。しかし、こうした風評レベルの情報にまでアンテナを張る規制当局や証券市場の姿勢から、第三者割当増資をめぐっては、反社会的勢力の排除に留まらず、不公正ファイナンスの防止や反市場勢力の市場参入抑止がますます重要視される時代の到来を予感させられました。

いまや、第三者割当増資に際する健全性調査では、「反社会的勢力との関係がないこと」と「不公正ファイナンスの防止」の二つの視点による情報収集・分析が不可欠となっています。以下では、そうした健全性調査のあり方について、調査実務の観点から具体的にご紹介したいと思います。


[1] 『不公正ファイナンスの実態分析と証券取引等監視委員会の対応』平成25年6月 証券取引等監視委員会(https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2013/2013/20130626.pdf)/『証券取引等監視委員会メ-ルマガジン(第28号)平成25年3月1日』(https://www.fsa.go.jp/sesc/message/20130228-1.html)などを参考に整理。

調査実務からみた健全性調査

  • 調査手法について

上記のとおり、第三者割当増資に際する健全性調査では、「反社会的勢力との関係がないこと」と「不公正ファイナンスの防止」の二つの視点による情報収集・分析がなされます。

このうち、「反社チェック」については、マスメディアによる報道・ウェブ上の公開情報などの収集・分析が中心となります。これは、対象となった法人・個人が暴力団員による犯罪に加担し、共犯として逮捕されたといった検挙情報の有無を確認する実効的な手法として広く用いられています。また、暴力団等からの被害の防止や救済を目的とする「暴力追放運動推進センター(暴追センター)」や「公益社団法人警視庁管内特殊暴力防止対策連合会(特防連)」の会員企業であれば、これらの団体と連携することで得られる情報提供や照会などが有効に活用できます。

他方、「不公正ファイナンスの防止」という視点からの健全性調査では、“反社会的勢力としての属性”だけに着目するのでは不十分です。「不公正ファイナンスの防止や反市場勢力の市場参入の抑止」という視点が求められる第三者割当増資のシーンでは、マスメディアの報道やインターネット情報など、デスクトップ上で得られる情報にとどまらず、調査対象を知る立場にある人物を対象にした聞き取り調査や重要な拠点住所地における現地確認など、さまざまな調査手法を用いて得られた情報を複合的に組み合わせた、客観的なリスクの分析・評価が求められます。

  • 調査範囲について

これまで数千件にのぼるコンプライアンス関連の調査を実施してきた当社の経験上、割当予定先自体に明らかなコンプライアンス上の問題が認められるケースはほとんどありません。そもそも「不公正ファイナンス」のスキームとは、第三者割当増資を活用した「複雑且つ巧妙」な計画である以上、直接的な当事者に問題がある人物や団体を置かないのは当然のことです。このため、割当予定先の健全性調査で着目すべきは、割当予定先やアレンジャーなど、第三者割当増資に関与する個人・団体のバックグラウンドになります。

企業内容等開示ガイドライン[1]でも「割当予定先が特定団体等[2]に該当するか否かについては、当該割当予定先に加え、例えば、当該割当予定先の親会社、主たる出資者、子会社、役員について確認し、必要に応じて、提出者に当該割当予定先を紹介・あっせんした者、割当予定先の払込資金の資金拠出者(例えば、割当予定先への資金貸付者)等についても確認することが考えられる。」[3]と示されています。なお、割当予定先の健全性調査は、あくまで第三者の立場から得られる客観的な情報に基づいて行う必要があります。

このため、具体的な調査範囲の選定においては、割当予定先やアレンジャーなど(以下、「割当当事者」という)のホームページやSNS、その他インターネット上で得られる様々な公開情報/商業および不動産登記簿謄本など、割当当事者および主要な関係者が役員を務める法人や関連住所地などの公募情報/割当当事者の所在地・自宅住所地で確認できる関連法人・個人に関する情報――を活用して、的確と考える調査範囲を設定するのが有用です。

  • 調査上の制約について

割当予定先の健全性調査とは、端的には、「不適切な割当先でないことを客観的に確認するためのプロセス」を意味します。

一般的に、自分自身のことであっても、周囲に対して何かの潔白を証明するのはそう簡単なことではありませんが、健全性調査とは、第三者が、ある組織や個人について、「不適切な割当先でない」ことを客観的に確認しようとする試みに他なりません。いうまでもなく、そうした試みには、いくつかの制約あるいは前提が伴います。

具体的には、第一に、本人(あるいは近しい人間)しか知りえない情報を収集することは基本的に不可能という前提に立ち、第三者が得られる情報の中から、リスクやその端緒になり得る情報を客観的に精査・分析する必要があること、第二に、違法性が疑われる調査手法は当然に排除されるので、調査で得られる情報の多くは公知情報の積み重ねであるということ、第三に、割当増資の実行とその旨のリリースなど、予定されたスケジュールの中で調査を完了する必要があり、調査に費やすことのできる“時間”や“労力”(あるいは、“費用”)が限られるということ、などです。


[1] 企業内容等開示ガイドラインとは、「企業内容等開示制度」における留意事項や審査・処分の基準等をまとめたガイドラインを指す。「ディスクロージャー制度」とも呼ばれ、金融商品取引法において、事業の内容や状況等を適切に開示するための制度といえる。

[2] 特定団体等とは、「処分予定先及びその役員が暴力若しくは威力を用い、又は詐欺その他の犯罪行為を行うことにより経済的利益を享受しようとする個人、法人その他の団体」を指す。

[3] 『企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等の開示ガイドライン)』令和5年1月、金融庁企画市場局(https://www.fsa.go.jp/common/law/kaiji/230131_kaiji.pdf)

健全性調査のポイント

以上、第三者割当増資に内在するリスクおよび健全性調査にあたっての主要な調査観点についてご紹介してきました。それらを踏まえて、民間企業のみなさまは、具体的にどのような問題意識で健全性調査に臨むべきなのでしょうか。企業にとって、有益な割当予定先の健全性調査を行うためのポイントは以下の5点です。

  1. 最適な調査範囲の設定とそれに向けた調査対象の洗い出し
  2. 複数の調査対象をめぐる重要度に応じた優先順位の設定、およびそれに応じた調査手法の設定
  3. 客観的な裏付けを伴う「一次情報(事実情報)」と、伝聞・風評等の「二次情報(定性情報)」との明確な区別・整理
  4. 必要十分な調査期間の確保
  5. クライアント企業(第三者割当増資の発行体)と第三者調査会社との間の「不公正ファイナンスの防止や反市場勢力の市場参入の抑止」を念頭に置いた調査目的と必要情報の共有

上記1.と2.は、“いかに有効かつ実効的な調査を実現するか”という点で重要です。つまり、客観的に適切と考えられる調査範囲と各対象の重要度に応じて合理的に設定された調査手法に基づいて、調査に濃淡を付けることが、有効かつ実効性のある調査の要素になります。また、3.の注意点にあるとおり、情報の性質を見極め、分析の材料として的確に取り扱わなければ、客観的且つ合理的な調査とはなり得ません。

4.と5.の注意点は、第三者割当増資の発行体が事前に意識しておくべき点です。発行体の担当者にとってみれば、第三者割当増資という事案自体、普段の業務内容とは隔たりのある“非日常的な事案”といえるでしょう。このため、こうした事案を初めて担当される方も少なくなく、一連の手続きやその流れについて不慣れであることから、そもそも健全性調査の必要性を認識したり適切にスケジュール管理をしたりすることにハードルがあってもおかしくはありません。

第三者割当増資に求められる「攻め」の視点

第三者割当増資には、上記のさまざまリスクに加えて、既存株主の議決権の希薄化などといったデメリットが内在します。一方、他の資金調達(公募増資)に比べてスピーディーに資金調達が行える点は、大きなメリットといえます。しかし、第三者割当増資のメリットはこれだけにとどまりません。それは、割当増資の発行体と引受先との信頼関係強化に役立つ点です。

例えば、「既存の取引先を出資者として指定し、業務提携だけでなく資本提携を並行して行うことで事業の拡大や多角化を図る」という形は、“縁故募集”と言われる三者割当増資の典型的な戦略的活用といえるでしょう。このように、第三者割当増資を≪近視眼的な資金調達手法≫と捉えず、≪M&Aの一手法≫と考えた場合、割当予定先の健全性調査は、「反社会的勢力が関係しないことの確認」はもちろんのこと、「不公正ファイナンスの防止や反市場勢力の市場参入の抑止」といった社会的要請に基づく観点を超えて、M&Aの実行と成功に向けた戦略的な情報収集と捉えなおす必要があります。

M&Aは、主に技術獲得/人材確保/事業成長の期間短縮/多角化対応/リスク回避/海外進出/競業企業の買収――といった目的で実行されます。それぞれ、あるいはいくつかの目的の組み合わせに応じて期待されるシナジーも異なりますが、いずれの場合でも、“リスク”(特に、“反社会的勢力の関係関与”など、コンプライアンス上のリスク)にのみ目を向けた調査では、十分なシナジーを得るための情報収集としては不十分です。

また、昨今の急速な国際情勢・経済環境の変化は、企業の持続的な成長に対してこれまで以上に大きな影響を与えています。反トラスト法(独占禁止法)の強化、日本の経済安全保障、ESGやSDGsを含むサスティナビリティ問題――といった種々の事柄に対して、各企業が自らの置かれた状況や環境に合わせた取り組みを的確に選別・選定し、実行する必要があります。「法制化されたのでやむなく」といった受け身の姿勢や、「ライバル会社や業界的にも取り組み始めたので」という横並び意識があっては、先行者利益を得られないのはもちろん、既存の優位性自体を損なう要因となり得ることは、日本の“空白の30年”を見れば火を見るよりも明らかです。戦略なき活動に成長は伴いません。政治/経済/社会/技術といった様々な要因を分析し、自社の成長戦略に適切に落とし込むための適切な情報収集を行うこと、これこそが“戦略的M&A”の実現に必要な「企業Intelligence」のあり方だといえます。

総括:リスクとどう向き合うか

今回のアナリスト・レポートでは、民間企業にとって有用な資金調達手段の一つである第三者割当増資について、割当予定先の健全性を正確に捉えるため、その基礎になる法制度と取締当局・証券市場の意図を整理したうえで、基本的な「健全性調査」の方向性と実務的な注意点を取りまとめました。調査の対象や手法について、具体的な事例に言及することはしていませんが、最近では海外の法人・個人を割当予定先とするケースも増えており、資金調達に向けた健全性調査という切り口に限っても、着目すべきポイントや調査すべき事項、採用する手法などは多岐にわたります。今回、触れなかったこうした点についても、いずれご紹介していきたいと思います。

他方、“資金調達”だけに目を向けた調査は、第三者割当増資に伴うコンプライアンスリスクの低減という一点のみを捉えようとするものであるため、いわば最低限必要な要素といえます。そして、第三者割当増資という場面で有益な調査とは何かを考えると、第三者割当増資そのものを≪資金調達の手法≫と考えるのではなく、≪M&Aの一手法≫と捉えなおす必要があることに気づきます。

本稿の最後では、第三者割当増資を経営戦略の一手として活用するため調査の在り方について言及しています。現代企業が持続的な成長を遂げるためにいかなる戦略をとるべきか、数多の選択肢の中から最良の選択を行うためには、刻一刻と変化する国内外の政治・経済・社会的な環境を的確に捉え、積極的に自社の経営戦略に織り交ぜていく必要があります。

こうした複雑かつ高度な経営戦略の一つとして第三者割当増資を捉えてこそ、企業にとって第三者割当増資は有益なM&A手法となるでしょう。我々JPリサーチ&コンサルティングは、M&Aなどの重要取引を成功に導く力が“インテリジェンス(意思決定のための精査された情報)”にあると考え、そうした企業のみなさまの経営判断に資するビジネス・インテリジェンスのご提供を最大のパーパスとしております。